おかざき


東京都の西部は青梅市。その街中には青梅線が乗り入れ、同線の拠点となる
青梅駅が構えています。青梅線に並走する国道411号を奥多摩方面に進むと、
町から離れ、山岳道路へと移り変わります。その411号を青梅の駅前から出発して
間もない頃、右手に酒屋が見えます。ごく普通の酒屋ですが、何やら不思議なものが・・・
「おかざき」と書かれた、国鉄様式の駅名標が掲げられていました。こんな所に
駅名標・・・?目の前は道路で、鉄道らしきものはありません。すぐ後方に青梅線が
ありますが道路からは見えない上、「おかざき」なる駅も存在しません。そもそも
ここは酒屋のはず、鉄道とは関係ないのに駅名標とは一体・・・。ふと駅名標の下を
見ると、石碑がありました。足元にポツンと立つ小さなもので、簡潔な文章が
記されていました。「ここに駅在りき」。ここに駅があった・・・?青梅線は
昔ここに駅を構えていたのでしょうか?しかし、土台を見ると、青梅線とは
関係ないことが記されていました。「中武馬車鉄道森下駅跡」。馬車鉄道とは
鉄道黎明期の頃に各地で敷かれた、文字通り馬が客車を牽く鉄道ですが、こんな所に。

そう、ここにはかつて中武馬車鉄道という馬車軌道が敷かれていました。
青梅と現在の狭山市を結んでいた路線で、1901年より1917年までの、
短い期間ながら営業を行っていました。ここはその終点だった「青梅駅」で、
青梅鉄道(後の青梅線)の青梅駅とは別物の駅でした。そのため地元では
駅のある地名から「森下駅」と呼ばれて親しまれていました。
「おかざき」とは、通称・森下駅の跡地に構える酒屋で、その先祖が
中武馬車鉄道の経営者だったそうです。その縁があって、店の主人がこのような
駅名標や石碑を店前に設置、ここに駅があったことを後世に伝えています。


アクセス:青梅駅より、国道411号を奥多摩方面へ。徒歩10分程度。


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